退職が決まって、ふと「そういえば保険証ってどうなるんだろう」と思ったとき、調べ始めるともう分からなくなっていませんか。任意継続、国民健康保険、扶養。似た言葉が並んでいるのに、どれを選べばいいのかを教えてくれる説明が、なかなか見つかりません。
無理もありません。会社にいるあいだ、健康保険料は給与から勝手に引かれていて、自分で選んだことが一度もないからです。
退職の社会保険の手続きは、給与計算の担当者が処理します。わたしはその側で、毎年たくさんの退職を見送ってきました。そのなかで、いちばん多い後悔がこれです。
「20日を過ぎてから相談に来られる」
この記事の結論は1つです。退職後の健康保険は「扶養に入れるか」→「任意継続と国保のどちらが安いか」の順に、この2つだけを確認すれば決まります。
読み終わるころには、自分がどれを選ぶべきか、そして何日以内に動けばいいかが分かります。
この記事でわかること
- 退職後に選べる3つの選択肢と、それぞれの保険料の決まり方
- 見落とすと取り返しがつかない「20日」という期限
- 会社都合で辞めた人だけが使える、国民健康保険の軽減制度
- 自分がどれを選ぶべきかの判断手順
選択肢は3つ。順番に確認すれば決まります

退職後の健康保険は、次の3つのどれかに加入します。どれにも入らない、という選択肢はありません。
| 加入先 | 保険料 | 手続きの期限 | |
|---|---|---|---|
| ① 家族の扶養 | 家族の勤務先 | 0円 | 家族の会社へ速やかに |
| ② 任意継続 | 退職前の健康保険 | 在職中の約2倍(上限あり) | 退職日の翌日から20日以内 |
| ③ 国民健康保険 | 市区町村 | 前年の所得で決まる | 退職日の翌日から14日以内 |
確認する順番は、①→②③です。①に入れるなら保険料が0円なので、比較する必要すらありません。
退職日の翌日から、保険証は使えなくなります
まず前提です。健康保険証が使えるのは退職日まで。翌日(これを「資格喪失日」といいます)からは使えません。
退職したら、保険証は必ず返却しましょう!
退職日の翌日以降に保険証(資格確認書)を使い病院にかかると、無効な保険診療となり、一般的には7割〜8割分を「返還金」として返す義務を、あなたが負います。
退職日と資格喪失日は1日ずれます。3月31日退職なら、資格喪失日は4月1日です。4月1日から使えません。書類の日付欄でつまずく方が、とても多い場所です。
そして大事なのは、退職後、健康保険への加入手続きが遅れても「保険に入っていなかった期間」にはならないということ。国民健康保険は退職日の翌日にさかのぼって加入扱いとなり、保険料もその分さかのぼって請求されます。つまり先延ばししても保険料を支払わずに済む期間はないため、淡々と手続きを進めましょう。
うさチュウ保険証の空白期間が心配かもしれないけど、手続きをすれば退職日の翌日にさかのぼって加入扱いになるよ。いまは保険証にかわって「資格確認書」が交付されるんだけど、郵送か、窓口で即日もらえるかは自治体によって違うんだ。急ぐときは、本人確認書類を持って窓口で相談してみてね。
① まず確認:家族の扶養に入れませんか
配偶者や親、子どもが会社の健康保険に入っているなら、その被扶養者になれる可能性があります。
被扶養者の保険料は0円です。家族の保険料が上がることもありません。ここに入れるかどうかが、いちばん大きな分かれ目になります。
収入の条件
協会けんぽの場合、年収の見込みが130万円未満(60歳以上または障害厚生年金を受けられる程度の障害がある方は180万円未満、19歳以上23歳未満は150万円未満)で、かつ被保険者の年収の2分の1未満であることが条件です。
ここで注意したいのが、この「年収」に失業給付が含まれるという点です。
退職後にハローワークから受け取る基本手当は、税金はかかりませんが、健康保険の扶養の判定では収入として扱われます。そのため、給付の日額によっては扶養に入れません。基準は加入先の健康保険によって運用が異なるので、家族の勤務先を通じて確認してください。
令和8年4月から、収入の見方が変わりました
令和8年4月1日以降、被扶養者の認定における年間収入の考え方が変わっています。労働契約で定められた賃金(諸手当・賞与を含む)から見込まれる年間収入が基準額未満で、ほかに収入が見込まれないなら、原則として被扶養者として扱われます。
以前より判断の基準がはっきりしたので、パートを始める予定がある方は、契約内容の段階で確認しておくと安心です。
② 任意継続:期限は20日。過ぎたら二度と入れません
任意継続は、退職後も在職中と同じ健康保険に、個人として加入し続ける制度です。
条件は2つだけ
- 退職日までに、健康保険の被保険者期間が継続して2か月以上あること
- 退職日の翌日から20日以内に申出書を提出すること
2か月以上の期間は、同じ会社である必要はありません。空白なく続いていれば、転職をまたいでいても構いません。
そして20日。この期限には、例外がほとんどありません。郵送の場合は、20日以内に「到着」していることが必要です。
わたしが実務でいちばん多く見てきた後悔が、ここです。退職の片づけや引っ越しに追われているうちに20日が過ぎ、任意継続という選択肢そのものが消えます。国民健康保険のほうが高いと分かっても、もう戻れません。
退職日が決まった時点で、カレンダーに「20日後」を書き込んでおいてください。



任意継続は20日を過ぎると申し込めなくなるから、「あとで変える」ことができないんだ。逆に、任意継続に入ってから国民健康保険に移ることはできる。だから迷ったら、先に任意継続の期限を押さえるほうが選択肢は減らないよ。
保険料は「在職中の約2倍」。ただし上限があります
会社員の場合、「標準報酬月額」という仕組みがあるため、一目で毎月の保険料がわかる一覧表があります。在職中は、健康保険料を会社と半分ずつ負担していますが、退職後は会社の負担がなくなるので、自分で全額を払います。だから約2倍です。
計算式はシンプル
退職時の標準報酬月額 × 住んでいる都道府県の保険料率(子ども・子育て支援金率を含む)
40歳から64歳の方は、介護保険料が加わります。
※加入先の健保組合のホームページでも「保険料額表」をご確認ください。
ただし、「協会けんぽ」は標準報酬月額に上限があります。「健康保険組合」の場合は規約により異なります。
令和8年度の上限は、標準報酬月額32万円で全国一律(令和7年3月分までは30万円)。
つまり、退職時の標準報酬月額が32万円を超えていた人は、32万円で計算されます。給与が高かった人ほど、この上限のおかげで任意継続が有利になりやすいわけです。
保険料は原則2年間変わりません(保険料率の改定などを除く)。給与明細に載っていた健康保険料をおよそ2倍すれば、目安がつかめます。
加入できるのは2年間。でも、いつでもやめられます
任意継続の期間は最長2年です。そして次のどれかに当てはまると、途中で資格を失います。
- 就職して、別の健康保険に入ったとき
- 保険料を納付期限までに納めなかったとき
- 本人が「やめたい」と申し出たとき
- 後期高齢者医療制度に入ったとき
3つめが大事です。法改正により、現在はやめたいと申し出れば、途中で抜けられます。
一方で2つめは、怖い規定です。うっかり納め忘れると、納付期限の翌日付で資格を失います。ここに注意「うっかり」という理由でも、健康保険法により定められているので資格を取り戻すことはできません(天災など、納付の遅れに正当な理由があると保険者に認められた場合を除きます)。口座振替か前納にしておくと安心ですね。
前納には割引があります。6か月分または12か月分をまとめて納めると、年4%の割引になります。
傷病手当金・出産手当金は、原則として受けられません
任意継続では、在職中と同じ給付をほぼ受けられますが、傷病手当金と出産手当金は対象外です(在職中からの継続給付の要件を満たす場合を除きます)。
在職中から病気やケガで休んでいる方は、ここが判断を左右する可能性があります。任意継続に入る前に、加入先の健康保険に必ず確認してください。
③ 国民健康保険は、前年の所得で決まります
市区町村が運営する保険です。扶養にも任意継続にも入らない場合は、こちらに加入します。
保険料の決まり方が、任意継続と根本的に違います


任意継続が「退職時の給与」で決まるのに対し、国民健康保険は「前年の所得」と「世帯の加入人数」で決まります。
ここが、多くの人がつまずく理由です。退職して収入がゼロになっても、保険料は去年の所得で計算されるため、「働いていないのに高い」という状況が起こります。逆に、退職した翌年分は前年度の収入が低いと任意継続より、国民健康保険の納付額が低い場合があります。
また、任意継続は扶養家族の保険料がかかりませんが、国民健康保険には扶養という考え方がありません。加入する人数分の保険料がかかります。家族が多い方は、この差が大きく効きます。
計算方法は市区町村ごとに違うので、金額は自分で計算するより試算してもらうほうが確実です。やり方は次の「結局、どう選べばいいのか」でくわしく書きます。思っているより簡単です。



退職時に任意継続を選択した人も、その年の年収が少ない場合は、翌年から国民健康保険料の方が低くなる可能性があるね。その場合、任意継続から国民健康保険へ切り替えると、保険料を安くおさえられるんだ!
会社都合で辞めた人には、大きな軽減制度があります
倒産・解雇・雇い止めなどで辞めた方(非自発的失業者)は、国民健康保険料が軽減されます。
前年の給与所得を、100分の30(3割)として計算します。
所得が3割として扱われるので、保険料はかなり下がります。軽減される期間は、離職日の翌日が属する月から、その年度の翌年度末までです。
対象になるのは、雇用保険の特定受給資格者または特定理由離職者と認められた方です。ハローワークで失業給付の手続きをすると交付される書類で確認できます。
この制度があるため、会社都合で辞めた方は国民健康保険のほうが安くなるケースが多くあります。自己都合退職の場合は対象外です。
なお、軽減されるのは本人の給与所得だけです。事業所得や年金所得、世帯のほかの加入者の所得は、通常どおり計算されます。
結局、どう選べばいいのか
3ステップで決まります。
ステップ1:家族の扶養に入れるか聞く
入れるなら、保険料0円なので比較不要です。家族の勤務先に伝えて手続きしてもらいます。失業給付を受け取る予定があるなら、そのことも一緒に伝えてください。
健康保険では、事実婚(内縁関係)のパートナーも扶養に入れることができます。
社会保険では実態の生計維持関係が重視されるため、法律婚と同じ配偶者として認められます。
ステップ2:任意継続と国保、両方の金額を出す
ここが山場に見えますが、やることは1つずつ見ればとても単純です。
先に1つだけ。見る書類が違います


任意継続と国保は、保険料の決まり方がまったく違います。そのため、金額を調べるときに見る書類も違います。
| 何で決まるか | 見る書類 | 賞与は | |
|---|---|---|---|
| 任意継続 | 退職時の標準報酬月額 | 給与明細 | 入りません |
| 国民健康保険 | 前年の所得 | 源泉徴収票の「支払金額」 | 入ります |
賞与は、任意継続の保険料には入りませんが、国保の保険料には入ります。「賞与を数える・数えない」で考えると混乱するので、見る書類が違うと覚えてください。
源泉徴収票の「支払金額」には、もともと賞与が含まれています。足し算は要りません。
※賞与が年4回以上支給される場合は、賞与も標準報酬月額に含まれます。年3回以下なら含まれません。
任意継続は、誰にも聞かずに自分で出せます
いちばん手軽なのは、給与明細の「健康保険料」をおよそ2倍する方法です。これで十分に比較できます。賞与が出た月は賞与分の保険料が別に引かれていることがあるので、通常の月の明細を見てください。
もう少し正確に知りたいときは、協会けんぽが公開している保険料額表を見ます。自分の都道府県のページを開き、標準報酬月額の行の「全額」の欄を見てください。それが任意継続の保険料です。40歳から64歳の方は、介護保険料が入っている列を見ます。同様に、健康保険組合のホームページでも「保険料額表」で確認できます。
協会けんぽの場合、標準報酬月額が32万円を超えている方は、32万円の行を見てください。上限があるためです。健康保険組合は、上限の扱いが組合によって違います(規約で定めれば、退職時の標準報酬月額をそのまま使う組合もあります)。加入していた組合の保険料額表で確認してください。
国民健康保険は、まず市区町村のホームページを見ます
「(お住まいの市区町村名) 国民健康保険料 試算」で検索してみてください。次のどれかが用意されていることが多く、その場で目安が分かります。
- オンラインの試算システム:加入する人数と前年の所得を入れると、年額の目安が出ます
- 試算シート:Excelやプリントして手計算できる用紙
- 概算の早見表:所得の階層ごとに金額が並んだ表
- 試算の依頼フォーム:必要事項を送ると、職員が計算してメールで返してくれます(数日かかります)
源泉徴収票の「支払金額」を手元に用意してから始めるとスムーズです。これが賞与を含んだ1年分の収入です。
⚠️ 電話では試算してもらえないことがあります
ここは先にお伝えしておきます。電話での試算を受け付けていない自治体があります。
意地悪をしているわけではなく、国民健康保険料の計算には世帯で加入する人全員の前年の収入・加入する時期・人数・年齢が必要で、口頭でやりとりすると間違った金額を伝えてしまうからです。
対応は自治体によって違います。ホームページに試算のしくみを用意しているところ、依頼フォームで受け付けるところ、窓口だけのところ、さまざまです。
ですからいきなり電話をかけるのではなく、先にホームページを見てください。そのほうが早くて確実です。
ホームページに無ければ、窓口へ。持ち物とセリフはこれだけです
試算のしくみも依頼フォームも見つからないときは、窓口で相談します。これは加入の申し込みではないので、金額だけ聞いて帰って構いません。
持っていくもの。
- 前年の収入が分かるもの(源泉徴収票など)。世帯で国民健康保険に入る人全員の分
- 本人確認書類
- 会社都合で辞めた方は、ハローワークで受け取った雇用保険の書類
窓口で言うことは、これだけです。
「退職して国民健康保険に入るか迷っています。保険料がいくらになるか、試算をお願いできますか」
そして会社都合で辞めた方は、「軽減の対象になりますか」を必ず添えてください。前年の給与所得が3割として計算されるため、金額が大きく変わります。
両方の数字が並んだ時点で、答えはほぼ出ています。
ステップ3:安いほうを、期限内に手続きする
任意継続は20日、国民健康保険は14日。どちらも短いので、金額を調べるのは退職前から始めてください。
傾向としては、こうなりやすい
| こういう方 | 有利になりやすいのは |
|---|---|
| 扶養に入れる家族がいる | 家族の扶養(0円) |
| 退職前の給与が高かった | 任意継続(上限で頭打ちになるため。協会けんぽは32万円)健保組合は要確認 |
| 扶養する家族が多い | 任意継続(人数が増えても保険料は変わらないため) |
| 会社都合で辞めた | 国民健康保険(軽減制度が使えるため) |
| 前年の所得が低い | 国民健康保険 |
あくまで傾向です。必ず両方の金額を確認してください。
退職前にやっておくと、あとが楽になること
- 会社に「健康保険資格喪失証明書」の発行を頼んでおく(国民健康保険に入るときに必要になります)
- 給与明細の健康保険料の額を控えておく(任意継続の目安がすぐ出せます)
- カレンダーに「退職日の翌日から20日」を書き込む
- 家族の健康保険に入れるか、先に聞いておく
- 会社都合退職なら、ハローワークの手続きを早めに済ませる



退職すると手続きの多さに気持ちが重くなるかもしれないけど、健康保険はどれか1つ選べば終わり!扶養に入るか、2つの金額を比べて選ぶだけだよ。
保険の次に、考えておきたいこと
退職の手続きが片づくと、多くの方が同じところで立ち止まります。「次はどうしよう」です。
いま辞めたばかりの方も、まだ在職中で辞めるか迷っている方も、焦って決める必要はありません。手続きの期限とちがって、こちらに締め切りはないからです。
判断の材料をそろえてから考えたい方は、こちらもどうぞ。
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よくある質問
- 退職後の健康保険、任意継続と国民健康保険はどっちが得ですか?
-
一律には決まりません。退職前の給与が高かった方や扶養する家族が多い方は任意継続が、会社都合で辞めた方や前年の所得が低い方は国民健康保険が安くなりやすい傾向があります。任意継続は退職時の標準報酬月額(協会けんぽは令和8年度で上限32万円。健康保険組合は規約により異なります)で決まり、国民健康保険は前年の所得と世帯の加入人数で決まるためです。必ず両方の金額を確認してから選んでください。
- 任意継続の手続きを20日以内にできませんでした。どうなりますか?
-
任意継続には加入できなくなります。期限は退職日の翌日から20日以内で、郵送の場合は20日以内に到着している必要があります。この期限を過ぎた場合は、国民健康保険に加入するか、家族の扶養に入るかのどちらかになります。国民健康保険の手続きは退職日の翌日から14日以内です。過ぎても加入はできますが、退職日の翌日にさかのぼって保険料が発生します。
- 失業給付をもらいながら、家族の扶養に入れますか?
-
給付の日額によっては入れません。失業給付には税金がかかりませんが、健康保険の被扶養者を判定するときの「年収」には含まれます。年収の見込みが130万円未満(60歳以上または障害厚生年金を受けられる程度の障害がある方は180万円未満)という条件を満たすかどうかで判断されます。基準の運用は加入先の健康保険によって異なるため、家族の勤務先を通じて確認してください。
参考情報源(公的機関)
- 全国健康保険協会(協会けんぽ)「任意継続」
- 全国健康保険協会(協会けんぽ)「退職後の健康保険について」
- 全国健康保険協会(協会けんぽ)「令和8年度の任意継続被保険者の標準報酬月額の上限について」
- 全国健康保険協会(協会けんぽ)「都道府県毎の保険料額表」
- 厚生労働省「国民健康保険の保険料・保険税について」
- 厚生労働省「医療保険」
※この記事は2026年8月時点の公的情報をもとにまとめたものです。保険料は都道府県・市区町村によって異なり、制度も改正されることがあります。実際の手続きや金額は、加入先の健康保険(協会けんぽ・健康保険組合)およびお住まいの市区町村の窓口でご確認ください。


