雇用保険の制度
退職を控えている、または失業した場合などは、次の収入があるまでお金の不安がつきものです。そんな時に利用できる制度が雇用保険の失業給付です。失業給付は「いつから」「いくら」「どのくらいの期間もらえるのか」が気になるのではないでしょうか。
「失業給付」は仕組みが複雑そうに見えますが、基本を押さえれば意外とシンプルです。
この記事では、ざっくり雇用保険の基本的な仕組みと失業給付(基本手当)について、実務に役立つ情報を整理してお伝えします。
「失業保険」の正式名称は?
日常会話で「失業保険」と呼ばれることが多いですが、正式には「雇用保険」という制度であり、そのなかの「基本手当」がいわゆる”失業給付”にあたります。
雇用保険には基本手当以外にも、以下のような給付があります。
| 給付の種類 | 内容 |
|---|---|
| 基本手当 | いわゆる”失業給付”。失業中の生活を支援する |
| 育児休業給付金 | 育休中の所得補償 |
| 介護休業給付金 | 介護休業中の所得補償 |
| 教育訓練給付金 | スキルアップのための費用補助 |
| 高年齢雇用継続給付 | 60歳以降の賃金低下を補填する |
この記事では特に「基本手当(失業給付)」の自己都合退職を中心に解説します。
失業給付を受け取るには雇用保険への加入が必要です
失業給付は会社に在職中給与から「雇用保険料」を支払っていた人が受け取れる制度です。
ただし、加入していたことに加えて、受け取るための条件もあります。
令和8年度(2026年度)の一般事業における保険料率は次のとおりです。
雇用保険料は毎月の給与から差し引かれています。
| 負担者 | 保険料率 |
|---|---|
| 労働者(従業員)負担 | 0.5% |
| 事業主(会社)負担 | 0.85% |
| 合計 | 1.35% |
たとえば月給25万円の場合、雇用保険料の本人負担は 250,000円 × 0.5% = 1,250円です。
※実際の保険料は、基本給だけでなく通勤手当・残業手当など(雇用保険上の賃金)を合計した金額に料率をかけて計算します。
3点を確認しよう
雇用保険は、一定の条件を満たして働く人を支えるセーフティネットです。まず以下の3点を押さえましょう。
- 加入条件:1週間の所定労働時間が20時間以上で、31日以上引き続き雇用される見込みがあれば、会社が必ず加入させる義務があります(パート・アルバイトも対象)
- 受給条件:原則12ヶ月以上の加入期間に加えて、「働ける状態で求職活動をしているのに、就職できていない」ことが必要です
- 退職理由で大きく変わる:会社都合か自己都合かによって、受給が開始される時期と給付日数が異なります
「自分は関係ない」と思っていた人こそ、意外と使える制度です。
なお、「会社を辞めれば自動的に振り込まれる」と思っている方がいますが、そうではありません。退職後にハローワーク(公共職業安定所)で求職申し込みをして、一定の手続きを経てはじめて受け取れます。
基本手当を受け取れる期間は、原則として離職日の翌日から1年間です。手続きが遅れると、この期間内に所定給付日数を受けきれず、一部を受け取れなくなることがあります。仕組みを理解しておくことが大切です。
加入条件は「週20時間・31日以上」
雇用保険は、一定の条件を満たした労働者を、事業主(会社)が必ず加入させなければなりません(強制加入)。
加入条件は2つ
- 週の所定労働時間が20時間以上であること
- 31日以上の雇用見込みがあること
正社員かパートかは関係ありません。
加入できないケース(主なもの)
- 週の所定労働時間が20時間未満
- 季節的・短期のアルバイトで31日未満の雇用
- 学生(昼間部)として働いている場合(※一部例外で対象となる条件もありますがここでは割愛します)
「パートだから入れない」と思い込んでいる方は、一度ご確認ください。
※法改正により、2028年(令和10年)10月からは加入条件が「週10時間以上」に拡大される予定です。対象になる方が大きく増えるため、パート・アルバイトの方は特に覚えておきたい変更です。
なお、65歳以上の方は「高年齢被保険者」として雇用保険に加入でき、失業した場合は「高年齢求職者給付金」を受け取れる場合があります(基本手当とは別の制度です)。
受給資格は「加入期間」と「退職理由」で変わる
基本手当には、加入期間より先に大前提があります。「働く意思と能力があり、積極的に求職活動をしているのに、就職できていない」状態であることです。病気やケガですぐに働けない場合は原則対象外で、その場合は受給期間の延長手続きを検討します。
そのうえで、必要な加入期間は退職理由によって異なります。
一般的な場合(自己都合退職など)
- 離職の日以前2年間に、被保険者期間が通算12ヶ月以上あること
「被保険者期間」とは、雇用保険に加入していた月数のことです。賃金支払いの基礎となった日数が11日以上ある月(または賃金支払いの基礎となった時間が80時間以上ある月)が、1ヶ月としてカウントされます。
会社都合退職・特定理由離職者の場合
- 離職の日以前1年間に、被保険者期間が通算6ヶ月以上あること
倒産・解雇のほか、心身の障害、通勤困難、著しいハラスメントなど一定の事情がある場合は、「特定受給資格者」または「特定理由離職者」と認められ、より短い加入期間でも受給できることがあります。該当するかどうかは、個別の事情をもとにハローワークが判定します(会社が決めるものではありません)。
所定給付日数も退職理由によって異なる
自己都合退職(一般の離職者)の場合:
| 被保険者であった期間 | 給付日数 |
|---|---|
| 1年以上10年未満 | 90日 |
| 10年以上20年未満 | 120日 |
| 20年以上 | 150日 |
会社都合退職(特定受給資格者)の場合は、年齢・加入期間によって、もらい始めるタイミングや給付日数がさらに手厚く設定されています。
同じ期間働いていても、退職理由によって受け取れる日数が倍以上違うこともあります。退職前に確認しておくことが大切です。
自己都合退職は「給付制限」に注意
自己都合で退職した場合、すぐに基本手当を受け取ることはできません。2つの「待ち期間」があります。
待期期間(7日間)
退職理由にかかわらず、ハローワークで求職申し込みをした日から7日間は「待期期間」として、基本手当は支給されません。これは会社都合・自己都合に共通です。
給付制限期間(自己都合退職の場合)
自己都合退職の場合、待期期間が終わっても、さらに一定期間「給付制限」があります。この期間は基本手当が支給されません。
令和7年(2025年)4月1日以降に離職した場合のルールは次のとおりです(法改正で従来の2ヶ月から短縮されました)。
- 正当な理由のない自己都合退職:原則1ヶ月の給付制限
- 離職日からさかのぼって5年間に2回以上、自己都合退職で受給資格の決定を受けている場合:3ヶ月
- 自分の責任による重大な理由で解雇された場合(重責解雇):3ヶ月
- 離職日前1年以内または離職後に、厚生労働省が定める対象の教育訓練を受講した場合は、ハローワークへの申請により給付制限が解除されることがあります(どの講座でも対象になるわけではありません)
「すぐもらえる」わけではない点は変わらないため、退職前から準備しておくことが大切です。 また、給付制限が明けても実際の振込は認定日(4週間ごと)の後になるため、最初の入金までは退職から2ヶ月程度かかることもあります。
なお、給付制限の詳細や適用要件は改正されることがあります。最新の情報は厚生労働省またはハローワークでご確認ください。
失業保険を受け取るまでのフロー
基本手当を受け取るまでの流れ
STEP 1:離職票を受け取る
退職後、会社が手続きを行い、ハローワークから「雇用保険被保険者離職票」(1枚目・2枚目)が発行されます。退職後10日〜2週間程度で届くことが多いです。2週間ほどたっても届かない場合は、まず会社へ確認し、必要に応じてハローワークに相談しましょう。
STEP 2:ハローワークで求職申し込み
お住まいのハローワークへ必要書類を持参し、求職申し込みと受給資格の確認を行います。
【必要書類(主なもの)】
- 雇用保険被保険者離職票(1・2)
- 個人番号確認書類(マイナンバーカードなど)
- 身元確認書類(運転免許証など)
- 写真2枚(縦3.0cm×横2.4cm)※受給手続きのあとの失業認定などでも、毎回マイナンバーカードを提示する方法を選ぶ場合は、写真を省略できます
- 本人名義の普通預金通帳またはキャッシュカード
STEP 3:受給資格者証の交付・説明会
ハローワークで受給資格が決定すると「受給資格者証」が交付されます。あわせて受給説明会の案内があり、出席が必要です。
STEP 4:認定日にハローワークへ
原則として4週間に1度の「認定日」にハローワークへ出向き、求職活動の実績を報告します。認定されると、その期間分の基本手当が振り込まれます。
具体例
Aさんのケース(自己都合退職)
- 35歳、一般事務職、フルタイム正社員
- 退職前6ヶ月の月収:毎月25万円(6ヶ月合計:150万円)
- 雇用保険の被保険者期間:8年間
- 退職理由:自己都合(キャリアチェンジのため)
賃金日額の計算:
離職前6ヶ月の賃金合計 ÷ 180 = 賃金日額
1,500,000円 ÷ 180 = 8,333.33円
基本手当日額の目安:
賃金日額 8,333円の場合
令和7年8月1日以降の公式計算式に当てはめると以下のとおりです。
基本手当日額:約5,707.26円 →1円未満切り捨て5,707円
28日分がすべて支給対象となった場合、約15万9,800円(5,707円×28日)が目安です。
※失業手当はカレンダーの曜日に合わせ「4週間に一度の認定日」
賃金日額には給付率を掛けます(賃金日額が高いほど給付率は低くなる仕組みです)。
計算式の詳細は厚生労働省のHPで「基本手当日額の計算式及び金額」と検索してください。
※計算の基準や上限額・下限額は、原則として毎年8月1日に改定されます。実際の金額はハローワークが正式に計算・通知します。
所定給付日数:
- 被保険者期間8年(1年以上10年未満)→ 90日分
受給開始のタイミング:
- 待期期間7日 + 給付制限1ヶ月 = 支給対象は退職から約1ヶ月余り後〜(実際の振込は最初の認定日の後)
Aさんは、退職から1ヶ月余りたった後の分から、最大90日分の基本手当を受け取れる見込みです(振込は認定日ごと)。
Bさんのケース(会社都合退職)
- 42歳、製造業、フルタイム正社員
- 退職前6ヶ月の月収:毎月28万円
- 雇用保険の被保険者期間:15年間
- 退職理由:会社の事業縮小による解雇(特定受給資格者)
Bさんの場合、被保険者期間15年・年齢42歳・会社都合退職のため、所定給付日数は270日となります(特定受給資格者の年齢・期間別テーブルに基づく)。
また給付制限がないため、待期期間7日後から受給が始まります。
※実際の離職理由の区分は、離職票の記載や本人・会社双方の説明をもとにハローワークが判定します。
退職の状況(会社都合か自己都合か)によって、受け取れる総額に大きな差が生まれることがわかります。
今日からできるアクション
- 給与明細の「雇用保険料」欄を確認する
記載があれば雇用保険に加入しています。パートの方で記載がない場合は、週の労働時間を確認のうえ、会社の担当者に問い合わせてみましょう
- 自分の被保険者期間(何年加入しているか)を把握しておく
雇用保険被保険者証や過去の離職票で確認できるほか、勤務先やハローワークに照会できます(マイナポータルで見られる場合もあります)。転職歴がある方は、離職から1年以内に再就職し、その間に基本手当を受けていないなどの条件を満たせば、前職の期間も通算されます
- 退職が決まったら、離職票の発行時期を事前に確認する
退職前に総務・人事担当者へ「離職票はいつ頃届くか」を確認しておくと手続きがスムーズです
- 自己都合退職を検討中の方は、2〜3ヶ月分程度の生活費を確保しておく
給付制限(原則1ヶ月)と認定日のサイクルにより、最初の振込までは退職から2ヶ月程度かかることもあります。退職前から計画的に準備しておきましょう
- 最寄りのハローワークを調べておく
ハローワークインターネットサービス(厚生労働省)で、全国のハローワーク所在地を検索できます
まとめ
雇用保険の基本手当(失業給付)は、次の3つで大きく変わります。
| 項目 | ポイント |
|---|---|
| 加入条件 | 週20時間以上・31日以上の雇用見込みで会社が強制加入させる |
| 受給資格 | 働ける状態で求職活動中であることが大前提。必要な加入期間は退職理由で異なる(原則12ヶ月以上) |
| 給付内容 | 退職理由・加入期間・年齢によって日数と金額が変わる |
「失業保険のことは辞める時に考えよう」と思いがちですが、事前に仕組みを知っておくことで、退職後の生活設計が立てやすくなります。
退職を考えている方も、人事担当者として情報を整理したい方も、まずは「自分がどの区分に当てはまるか」を確認してみてください。
うさチュウ失業保険について知っておくのも大切だけど、いざという時のために日頃から貯金しておくと当面の生活を維持できるよ!たとえば基礎生活費の3ヶ月〜1、2年程度を蓄えておくと安心だね。
よくある質問
- パート・アルバイトでも雇用保険に入れますか?
-
週の所定労働時間が20時間以上で、31日以上の雇用見込みがあれば、雇用形態にかかわらず会社が加入させる義務があります。なお法改正により、2028年(令和10年)10月からは「週10時間以上」に条件が拡大される予定です。
- 自己都合退職だと、失業給付はいつからもらえますか?
-
求職申し込み後の待期期間7日間に加えて、原則1ヶ月の給付制限があります(令和7年4月の改正で2ヶ月から短縮)。厚生労働省が定める対象の教育訓練を受講し、ハローワークに申請すれば給付制限が解除されることがあります。実際の振込は認定日の後になるため、最初の入金までは退職から2ヶ月程度かかることもあります。
- 失業給付(基本手当)はいくらもらえますか?
-
退職前6ヶ月の賃金合計を180で割った「賃金日額」に、50〜80%の給付率をかけた金額が1日分です(賃金日額が高いほど給付率は低くなります)。正確な金額はハローワークが計算して通知します。
関連記事
雇用保険料は毎月の給与から天引きされています。給与明細の見方や各控除項目について詳しく知りたい方は、こちらもあわせてどうぞ。
※この記事は作成時点の公的情報をもとに一般的な内容をまとめたものです。制度は改正される場合があります。実際の判断は、厚生労働省・ハローワーク(公共職業安定所)などの公式情報や、勤務先・専門家にご確認ください。
参考情報源(公的機関)
