給与計算の手当は税・社保・雇用保険に含める?支給項目の設定一覧表

うさチュウが指し棒で、給与計算システムの項目ごとに○・△・チェックが並んだ設定一覧表を示し、「設定に迷ったら、この表!」と書かれたアイキャッチ
担当者

新しく手当を作ることになったんですが、給与ソフトの「課税」「社保」「雇用保険」のチェック、どれを入れればいいか分からなくて……

うさチュウ

そこは本当に大事なところなんだ。設定を1つ間違えると、毎月ずっと間違えた計算が続いてしまうからね。手当ごとに、どの計算に入るかを一覧にしてみたよ。

給与計算のシステム(給与ソフト)では、手当などの支給項目ごとに「所得税で課税するか」「社会保険の報酬に含めるか」「雇用保険の賃金に含めるか」を設定します。この設定は、一度決めると毎月そのまま使われます。

ところが、答えは国税庁・日本年金機構・労働局など、あちこちの資料に分かれて書かれていて、1か所で見比べられません。この記事では、よく使う支給項目を1つの表にまとめ、迷いやすいところの見分け方と、確かめ先を書きました。

目次

この記事でわかること

  • よく使う23の支給項目が、所得税・社会保険・雇用保険・残業代の計算に入るかどうか
  • 「条件による」項目(家族手当・住宅手当・在宅勤務手当・食事・社宅など)の見分け方
  • 新しい手当を作るときに、設定を決める手順

表の見方

  • 所得税 課税:○=課税する/×=非課税(課税しない)
  • 社会保険 報酬:健康保険・厚生年金の「報酬」(標準報酬月額の計算)に入れるか(○=入れる)
  • 雇用保険 賃金:雇用保険料(労働保険料)の計算の元になる「賃金」に入れるか(○=入れる)
  • 残業代 基礎:残業代(割増賃金)を計算するときの1時間あたりの単価に入れるか(○=入れる)
  • △:条件によって変わる。表の下の「△の項目の見分け方」で条件を確かめる/別:毎月の報酬ではなく、賞与として別に計算する

つまずきポイント
手当の名前ではなく、中身で決まります。「住宅手当」という名前でも、全員に同じ額を払っていれば、残業代の計算から外せません。新しく作る手当は、名前より先に「何に対して、どんな決まりで払うのか」を就業規則や賃金規程で確かめましょう。

支給項目ごとの設定一覧表

スマホでは表を横にずらして見られます(左の列は固定されます)。

スクロールできます
支給項目所得税
課税
社会保険
報酬
雇用保険
賃金
残業代
基礎
基本給○○○○
残業手当・休日手当・
深夜手当(割増賃金)
○○○×
固定残業代
(みなし残業手当)
○○○×
役職手当・管理職手当○○○○
資格手当・技能手当○○○○
皆勤手当・精勤手当○○○○
地域手当・職務手当・
調整手当
○○○○
家族手当・扶養手当○○○△
住宅手当○○○△
別居手当・子女教育手当○○○×
通勤手当
(非課税の範囲内)
×○○△
通勤手当
(限度額を超えた分)
○○○△
宿日直手当△○○△
在宅勤務手当
(毎月定額・使わなくても返さない)
○○○○
在宅勤務の費用
(実費相当を精算)
××××
休業手当
(労働基準法26条)
○○○×
賞与
(年3回以下)
○別○×
出張の旅費・宿泊費
(通常必要な範囲の実費)
××××
結婚祝金・出産祝金・慶弔見舞金
(相当額で、臨時・恩恵的なもの)
××××
食事手当
(現金で支給)
○○○○
食事の支給
(現物)
△△△△
社宅・寮の貸与
(現物)
△△△△
会社の経費の立替精算
(実額)
××××

※法令どおりの一般的な扱いをまとめたものです。会社が法令より有利な扱いをしている場合に、それを減らしてよいという意味ではありません。会社の規程や支払い方によって変わることがあります。△の項目は、下の説明と確かめ先で、自分の会社の条件にあてはめてください。この一覧は、項目を順次増やしていきます。

「△」の項目の見分け方

家族手当・住宅手当・通勤手当と残業代

残業代の基礎になるのは、原則として通常の労働時間・労働日の賃金です。そのうち、計算から外してよいと法令で決まっているのは、家族手当・通勤手当・別居手当・子女教育手当・住宅手当・臨時に払う賃金・1か月を超える期間ごとに払う賃金の7つだけです(労働基準法37条5項・同施行規則21条)。実費の精算のように、もともと賃金でないものは別に考えます。

ただし、外せるかどうかは名前ではなく中身で決まります。家族手当・住宅手当・通勤手当は、家族の人数や、家賃・通勤の距離などに応じて額が決まるものは外せますが、全員に一律の額を払うものは外せません(厚生労働省)。

残業手当・固定残業代・休業手当と残業代

残業手当(割増賃金)や休業手当は、それ自体を残業代の1時間あたりの単価にもう一度足しません。表で「×」にしているのは、この意味です。

固定残業代は、通常の賃金の部分と、残業代にあたる部分が分けて分かるようになっていること、手当として払うなら就業規則などに残業代の定額払いだと書いてあることが前提です。実際の残業時間で計算した額が固定額を上回るときは、その差額も払います(厚生労働省)。

在宅勤務手当

毎月決まった額を渡し切りで払い、在宅勤務に使わなくても返さなくてよい手当は、所得税・社会保険・雇用保険のどれでも、給与と同じ扱いです。一方、在宅勤務に必要な費用の実費相当額を精算して払うものは、実費の弁償として、どれにも含めません(国税庁の在宅勤務FAQ・日本年金機構の事例集)。残業代の計算でも、実費の弁償にあたる在宅勤務手当は外せます(厚生労働省の通達)。

実費の弁償として扱うには、規程に業務分の計算方法を書き、領収書や計算の記録で支払額を確かめられるようにしておきます。また、いま残業代の基礎に入れている在宅勤務手当を外す変更は、ソフトのチェックを外すだけで済ませないでください。社員に不利になる変更になりうるので、規程の見直しや労使での話し合いが必要です(同じ通達)。

食事の支給

  • 所得税:本人が食事の価額の半分以上を払い、会社の負担が月7,500円以下(消費税等を除いた額で判定)なら非課税(2026年4月1日以後に支給する食事から。それより前は月3,500円)。条件を満たさないと、食事の価額から本人負担を引いた額が課税になります
  • 社会保険:食事は、厚生労働大臣が決めた都道府県ごとの価額で報酬に換算します。本人が払う額が、その価額の3分の2以上なら、報酬に入れません

現金で払う食事手当は、現物の食事とは別のものです。原則として給与として課税され(深夜勤務の夜食代などの例外があります)、現物の「7,500円」の条件は使えません。所得税と社会保険の基準も違うので、別々に判定します。都道府県ごとの価額は、日本年金機構「全国現物給与価額一覧表」で確かめましょう。雇用保険の扱いは、社会保険の「3分の2」の基準をそのまま使わず、管轄の労働局に確かめると確実です。残業代の計算に入れるかは、福利厚生として出しているのか、賃金として出しているのかで変わります。賃金にあたる現物は、原則として通貨に換算して残業代の基礎に入れます(厚生労働省)。

社宅・寮の貸与

社宅や寮も、所得税と社会保険で計算のしかたが違います。所得税は、社員(使用人)の社宅なら、国税庁の算式で出した「賃貸料相当額の50%以上」を本人から受け取っていれば、原則として課税されません(実際の家賃の50%ではありません)。役員に貸す社宅は別の基準です。社会保険は、厚生労働大臣が決めた価額で報酬に換算します。社会保険の住宅の価額は2026年10月から計算方法が変わりました。くわしくは社宅の現物給与が10月改正で説明しています。残業代の計算に入れるかは、食事と同じく、福利厚生か賃金かで変わります。

賞与

賞与(ボーナス)は、年3回以下の支給なら、社会保険では毎月の「報酬」ではなく「標準賞与額」として別に保険料を計算します。同じ性質のものを年4回以上払う場合は、毎月の報酬に含めます。表の「別」は、この意味です。残業代の計算からは、1か月を超える期間ごとに払う賃金として外せます。ただし、年俸を決めて、その一部を賞与の時期に払うような場合は、賞与の時期の分も残業代の基礎に入れることがあります(厚生労働省)。

宿日直手当・慶弔見舞金

宿日直手当は、一定の条件を満たす場合に限り、所得税で1回4,000円までの部分が非課税です。宿日直が本来の仕事である人などは対象外で、宿日直で食事が出る場合は非課税の枠が変わります(国税庁)。社会保険と雇用保険には含めます。残業代は、労働基準監督署の許可を受けた宿日直か、ふだんの業務をしているのかで扱いが変わるので、勤務の実態を確かめます。

慶弔見舞金や結婚祝金は、金額が社会通念上相当であれば所得税は非課税で、社会保険・雇用保険にも含めません。ただし、規程に基づいて毎月決まって払う見舞金のように、名前が見舞金でも中身が定期的な支払いなら、社会保険の報酬になることがあります。

新しい手当を作るときの設定の手順

  1. 規程を読む:就業規則や賃金規程で、その手当を「何に対して」「どんな決まりで」払うのかを確かめる
  2. 一覧表で近い項目を探す:中身がいちばん近い項目の行を見る
  3. △なら条件を確かめる:この記事の説明と、国税庁・日本年金機構・労働局の資料で、自分の会社の条件にあてはめる
  4. ソフトに設定して、テスト計算で確かめる:給与明細だけでなく、課税額・社会保険の届出用の報酬額・雇用保険の対象賃金・残業代の単価の計算内訳で、想定どおりの扱いになっているかを見る。現物で支給するものは、手取りに足して振り込んでしまわないよう、現金の手当とは設定を分ける

つまずきポイント
設定を間違えると、所得税の天引き額、社会保険の届出に使う報酬額、雇用保険料などが毎月ずれます。ずれが見つかったら、いつから間違えていたかをさかのぼって確かめ、訂正と精算をします。新しい手当を作った月と、規程を変えた月は、とくに念入りに確かめましょう。

うさチュウとQ&A

担当者

前任者が作った手当で、なぜその設定になっているのか分からないものがあります……

うさチュウ

まず賃金規程でその手当の支給条件を見てみよう。それから一覧表の近い行と比べて、設定が合っているかを確かめるといいよ。分からなければ、年金事務所や労働局、税務署に聞く前に、規程の条文と今の設定を手元にそろえておくと話が早いよ。

うさチュウ

手当の設定は、一度決めると毎月使われるもの。だからこそ、最初に1回ていねいに確かめておけば、あとがずっと楽になるよ。

よくある質問

通勤手当は社会保険の報酬や雇用保険の賃金に含まれますか?

含まれます。通勤手当は所得税では一定額まで非課税ですが、社会保険の報酬と雇用保険の賃金には、非課税の分も含めて全額が入ります。

在宅勤務手当は課税されますか?

毎月定額を渡し切りで払い、使わなくても返さなくてよい手当は、給与として課税されます。在宅勤務に必要な費用の実費相当額を精算して払うものは、課税されません。

残業代の計算から外せる手当は何ですか?

法令で外せると決まっているのは、家族手当・通勤手当・別居手当・子女教育手当・住宅手当・臨時に払う賃金・1か月を超える期間ごとに払う賃金の7つです(労働基準法37条5項・同施行規則21条)。ただし、家族手当・住宅手当・通勤手当でも、家族の人数や費用に関係なく一律の額で払うものは外せません。

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参考にした公的機関の情報

※この記事は2026年10月時点の公的情報をもとに、一般的な扱いをまとめたものです。制度は改正される場合があります。実際の設定は、自社の規程や支払い方に照らし、国税庁・日本年金機構・労働局などの公式情報でご確認ください。

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