残業代の計算方法をやさしく解説

目次

残業代について

「残業をたくさんしたのに、思ったより残業代が少ない気がする」

「そもそも残業代って、どうやって計算されているの?」

給与明細を受け取るたびに、こんな疑問を持ったことはありませんか。

残業代(割増賃金)は、労働基準法によってルールが決まっています。正しく計算されていれば問題ありませんが、会社側の計算ミスや、手当の扱い方の誤りによって、実際より少なく支払われているケースがないとも言えません。

残業代は「前月分を翌月の給料日に支払う」のが一般的であり、法律上も全く問題ありません。

「15分単位」「30分単位」での切り捨てはできません。

  • 「18:05に退勤したのに、18:00に丸められる」というのはよくある間違いです。
  • 労働時間は1分単位で計算するのが原則(労働基準法違反)です。

30分丸めて切上げ(18:05に退勤、30分の残業となる)は、社員有利であり問題ありません。

コロナ禍以降に定着した「在宅勤務手当」や「リモートワーク手当」は、毎月固定支給されている場合は残業代の計算基礎に含めます。ただし、実費精算の場合は含まれません。「ライフプラン手当(選択制確定拠出年金の原資となる手当)」も原則として残業代の計算基礎に含めます。

この記事では、残業代がどう計算されるのかを、給与明細で確認できるようにやさしく解説します。


残業の種類

残業代の計算式はシンプルです。

残業代 = 1時間あたりの賃金 × 割増率 × 残業時間数

割増率は残業の種類によって変わります。

残業の種類割増率条件
時間外労働(法定外残業)25%以上(1.25倍)1日8時間・週40時間を超えた場合
月60時間超の時間外労働50%以上(1.5倍)1ヶ月の法定時間外労働が60時間を超えた分
深夜労働25%以上(1.25倍)22時〜翌5時の時間帯
時間外+深夜50%以上(1.5倍)深夜に時間外労働した場合
法定休日労働35%以上(1.35倍)法定休日(週1日)に働いた場合
法定休日+深夜60%以上(1.6倍)法定休日の深夜に働いた場合

「自分の残業代が正しいかどうかは、この表と給与明細を照らし合わせることで確認できます。」


残業代の計算方法

残業代の計算がわかりにくい理由は、「何を基準にして計算するか」がポイントになるからです。そもそも「勤怠の登録を正確にする」ことが重要ですが、「割増率が状況によって変わる」など注意する点があります。

単純に月給を時間で割ればいいと思いがちですが、実際には「計算の基礎に含めない手当」があります。また、固定残業代(みなし残業)が設定されている会社では、仕組みを正しく理解していないと損をすることもあります。

「残業代の計算はシンプルに見えて、実は落とし穴がある。仕組みを知っておくことが自分を守る第一歩です。」


注意点1:「1時間あたりの賃金」の正しい求め方

残業代を計算するには、まず「1時間あたりの時間単価」を正しく出す必要があります。

1時間あたりの賃金 = 月給(基本給+対象となる手当) ÷ 1年間における1ヶ月平均所定労働時間数

月によって所定労働時間が変わるため、1年間の平均で計算するのが正確なルールです。

1ヶ月平均所定労働時間数の計算方法:

(365日 − 年間所定休日数) × 1日の所定労働時間 ÷ 12ヶ月

詳しくみていきましょう!

月給制の場合

①1年間の所定労働日数:

たとえば、年間休日120日・1日の所定労働時間が8時間の場合
※その年により年間休日は変動するのが一般的です。
 会社の給与担当部署へ問い合わて年間休日日数を確認してください。
 全社員への周知連絡として年間カレンダーを通知している会社もあります。

365日 − 120日 = 245日

②1ヶ月当たりの平均所定労働時間:

245日 × 8時間 ÷ 12 = 163.3333時間

所定労働時間:163.33時間

多くの会社では、就業規則で「小数点第2位以下を四捨五入する」と定めており、163.33時間(または163.3時間)として計算します。なお、端数を切上げて「164時間」にすると1時間あたりの時給が安くなり「労働者に不利」となることから、労働基準法違反(労働者に不利な条件の変更)となるため、切り上げ処理は認められません。

会社の就業規則(賃金規程)に端数処理の記載があるか確認してください。

③1時間あたりの賃金(基礎時給額):

法律で定められた除外賃金「家族手当、通勤手当など」
従業員に一律で支払われている住宅手当は含めますが、一律支給でなければ除外します。

たとえば、基本給230,000円 + 住宅手当(一律支給)15,000円 = 245,000円

245,000円 ÷ 163.33時間 = 1,500.0306…円

基礎時給:1,500円

端数処理:小数点第1位が「0」のため、50銭未満として切り捨て
行政通達のルールに従い、1円未満の端数を四捨五入(50銭未満切り捨て・50銭以上切り上げ)します。
1円未満を切上げて1,501円と規定にある場合、法律を上回る条件であり社員有利となるため合法です。

一律で「切り捨て」にする処理は違法です。

もし計算結果が「1,500.73円」など、50銭以上(0.5円以上)だった場合、本来は法律上「1,501円」に切り上げなければなりません。これを会社が事務手続きの都合などの理由で、一律で切り捨てて「1,500円」として計算していた場合は、労働基準法違反(賃金全額払いの原則に違反)となります。

時給制・パートの場合

時給がそのまま「1時間あたりの賃金」になります。
パートやアルバイトでも、法定労働時間(1日8時間・週40時間)を超えた場合は割増賃金が発生します。

「パートだから残業代はない」は間違いです。
法定労働時間を1分でも超えれば、割増賃金を受け取る権利があります。

法律上の労働時間:1日8時間・週40時間 これを超えた分は割増賃金が発生

たとえば、パート(時給制)で「時給1,300円、1日8時間、週5日」勤務の場合

①1日の給与:

1,300円 × 8時間 = 10,400円

②1週間の給与:

10,400円 × 5日 = 52,000円

残業が発生した場合の計算

すでに1日8時間・週40時間の枠が埋まっているため、これを超えて働いた時間は1分目からすべて「法定外残業」となり、時給が1.25倍になります。

③残業時の時給(割増時給):

1,300円 × 1.25 = 1,625円

たとえば、1日30分(0.5時間)残業した場合

1,625円 × 0.5時間 = 813円

1日分の日給は 10,400円 + 813円 = 11,213円

月に合計10時間残業した場合

1,625円 × 10時間 = 16,250円 が月給にプラスされます。


注意点2:割増賃金の計算基礎に「含まれない手当」がある

割増賃金の計算基礎となる賃金は、月給の全額ではありません。
以下の7種類の手当は、計算の基礎から除外できると労働基準法で定められています。

除外できる手当条件
家族手当扶養家族の人数に応じて支給されるもの
通勤手当通勤距離・費用に応じて支給されるもの
別居手当別居の事実に基づいて支給されるもの
子女教育手当子どもの教育費実費に応じて支給されるもの
住宅手当住宅費用の実費に応じて支給されるもの
臨時に支払われた賃金結婚祝い金など
1ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金賞与など

重要なポイント:これらは「名称」ではなく「実質」で判断されます。
たとえば「家族手当」という名称でも、家族数に関係なく全員に一律で支給される場合は、計算基礎に含める必要があります。

「手当の名前だけで除外できるかどうかを判断するのではなく、支給の実態で確認することが大切です。」


注意点3:「固定残業代」には落とし穴がある

求人票などに「固定残業代〇万円含む」と書いてある場合があります。
これは、あらかじめ一定時間分の残業代を給与に含めて支払う仕組みです。

固定残業代を設定するためには、以下の条件を満たす必要があります。

  1. 何時間分の残業代なのかが明示されている(「30時間分」など)
  2. 実際の残業時間が固定残業代の時間を超えた場合は、差額を支払う

つまり、「固定残業代を払っているから残業代は出ない」というのは誤りです。超過した分の残業代は別途支払われなければなりません。

また、固定残業代として支払う時間数が明確でない場合や、実態として残業代の支払いを免れるためだけに設定されているケースでは、無効と判断されることもあります。

「固定残業代があっても、実際の残業時間が超えていれば差額をもらう権利があります。まず何時間分かを確認しましょう。」


確認方法

自分の残業代を確認する手順:

  1. 給与明細で「残業時間」「残業代」「時間外手当」の金額を確認する
  2. 1時間あたりの賃金を計算する
    • 月給 ÷ 1ヶ月の所定労働時間数
  3. 割増率を確認する
    • 通常の時間外:× 1.25
    • 深夜・月60時間超など:× 1.5以上
  4. 実際の残業時間数を掛ける
  5. 給与明細の金額と照らし合わせる

そうは言っても、給与明細に残業代の根拠となる項目が載っていません💦といった場合は、給与担当部署へ問い合わせをしてください。会社は給与明細とは別に必ず「賃金台帳」の作成・保管を法律で義務づけられているので、給与明細に残業時間を記載していない会社であっても、賃金台帳には計算の根拠となる情報があり、労働者から求められたら開示する義務があります。
※労働者側も実際の労働時間を記録し保存しておきましょう。

残業代に大きく差があると感じたら、会社の給与担当部署に問い合わせて確認をしてもらう。
または、労働基準監督署に相談することができます。


具体例

【例:月給25万円・日の所定労働8時間・月の所定労働時間163時間・時間外残業10時間の場合】

※通勤手当・家族手当等の除外手当は含まない前提

① 1時間あたりの賃金を出す

250,000円 ÷ 163時間 ≒ 1,534円

② 割増賃金を計算する(時間外:25%増し)

1,534円 × 1.25 × 10時間 = 19,175円


【例:パートタイム・時給1,200円・1日6時間勤務・ある日10時間働いた場合】

  • 通常の6時間分:1,200円 × 6時間 = 7,200円
  • 6〜8時間の2時間分(所定外だが法定内):1,200円 × 2時間 = 2,400円(会社の規定による)
  • 8〜10時間の2時間分(法定時間外):1,200円 × 1.25 × 2時間 = 3,000円

※法定労働時間(1日8時間)を超えた部分のみ25%の割増賃金が発生します。


給与計算担当者の実務視点

残業代の計算でミスが起きやすいポイント:

  • 割増賃金の基礎となる賃金の範囲を誤る:名称だけで手当を除外してしまうケース
  • 所定労働時間数の設定ミス:年間休日の数え方や端数処理の誤り
  • 月60時間超の割増率の適用漏れ:2023年4月から中小企業にも50%が適用されているため、計算システムの設定確認が重要
  • 固定残業代の超過確認を忘れる:毎月、固定時間を超えていないか必ず確認する

今日からできるアクション

  • 今月の給与明細を開いて「時間外手当」「残業代」の金額を確認する
  • 自分の月給 ÷ 所定労働時間数で、1時間あたりの賃金を計算してみる
  • 固定残業代がある場合は「何時間分か」を雇用契約書や就業規則で確認する
  • 疑問があれば、会社の給与担当部署または管轄の労働基準監督署に問い合わせる
  • 厚生労働省「確かめよう労働条件」サイトで詳しく確認する → https://www.check-roudou.mhlw.go.jp/qa/roudousya/chingin/q3.html

まとめ

  • 残業代は「1時間あたりの賃金 × 割増率 × 残業時間数」で計算する
  • 割増率は時間外25%・深夜25%・法定休日35%・月60時間超50%
  • 計算の基礎となる賃金から除外できる手当は7種類(名称ではなく実態で判断)
  • 固定残業代があっても、超過した時間分は別途支払われるべき
  • 疑問があれば労働基準監督署に相談できる

残業代の仕組みを知っておくことは、自分の働きに正当な対価を受け取るための第一歩です。

給与明細は、会社からのお知らせではなく、自分のお金を確認するための大切な資料です。月に一度、時間外手当の欄をチェックする習慣をつけておきましょう。


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※この記事は2026年6月時点の公的情報をもとに一般的な内容をまとめたものです。制度は改正される場合があります。実際の判断は、厚生労働省・労働基準監督署などの公式情報や、勤務先・専門家に確認してください。

参考情報源(公的機関)

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