【最低賃金2026年10月改定】給与計算担当が確認すべき5つの実務

電卓を持つうさぎと10月のカレンダー。「最低賃金10月改定、給与担当が確認する5つのこと。時給の人だけ、じゃありません」の文字。
担当者

10月から最低賃金が上がりますよね。うちはパートさんの時給を直せば大丈夫でしょうか。毎年これで合っているのか、実はよく分かっていなくて。

うさチュウ

時給の人だけ見て終わり、にしてしまうと危ないよ。月給の人も対象だし、発効日も都道府県ごとに違うんだ。今日は確認する順番を整理するね。

毎年10月が近づくと、給与計算の担当者には「今年も最低賃金の確認をしなければ」という宿題がやってきます。ところが、何を・いつまでに・どこまで見ればいいのかは、意外とまとまった形で説明されていません。

私は給与計算を10年以上担当していますが、最低賃金のチェックは「時給のパート・アルバイトだけ直せばいい」と誤解されがちな作業です。実際には、月給制の社員も対象で、発効日も都道府県ごとにばらばらです。

この記事でわかること

  • 2026年度の最低賃金がどのくらい上がるか(答申ベースの全国加重平均と引き上げ額)
  • 発効日が都道府県ごとに違うこと、その確認方法
  • 給与計算担当者が発効前に確認すべき5つのこと(時給者・月給者の両方)
  • 最低賃金を下回っていた場合にどうなるか

先に結論です。まず自社の事業所がある都道府県の最低賃金額と発効日を労働局の発表で確認し、時給に換算して全従業員が新しい額以上かをチェックします。月給者は「月給÷1か月平均所定労働時間」で時間額に直して比べます。

目次

2026年度、最低賃金は全国平均で56円上がる

2026年9月3日、全都道府県で地域別最低賃金の改定額が答申されました。答申での全国加重平均額は1,177円で、前年度(1,121円)から56円の引き上げです。

⚠️ 7月に示された「目安」は全国加重平均1,176円・55円の引き上げでしたが、実際の答申はそれを上回りました。引き上げ額は都道府県ごとに54円〜65円と幅があります。「うちはAランクだから54円だろう」と目安のまま思い込まないでください。

2026年7月28日、厚生労働省の中央最低賃金審議会が引き上げ額の「目安」をまとめました。都道府県は経済実態に応じてA・B・Cの3ランクに分かれており、今回の目安は次のとおりです。

ランク目安の引き上げ額主な都道府県
Aランク54円埼玉・千葉・東京・神奈川・愛知・大阪
Bランク56円北海道・宮城・京都 など28道府県
Cランク56円青森・岩手・沖縄 など13県

この目安はあくまで「各都道府県で議論するときの参考額」です。実際の金額は、各都道府県の地方最低賃金審議会が答申し、都道府県労働局長が決定・公示して確定します。答申と決定は別の手続きです。

⚠️ 答申は9月3日に全都道府県で出そろい、すでに決定・公示された地域もあります。決定の時期は都道府県ごとに違うので、自社に適用される金額と発効日は、事業所がある労働局の最新の発表で確認してください。

この記事では、都道府県ごとの金額と発効日は載せません。決定の時期も発効日も地域で違い、日々更新されるためです。いちばん確実なのは、事業所がある都道府県労働局の発表を見ることです。

⚠️ 厚生労働省「地域別最低賃金の全国一覧」は毎年まとまった時点で更新されるため、改定直後は前年度の額が載っていることがあります。(2026年9月9日時点でも令和7年度のままでした)

発効日は都道府県ごとに違う

最低賃金の発効日(新しい額が有効になる日)は都道府県ごとに異なり、10月1日から一斉に、というわけではありません。

2026年度の改定額は、令和8年10月1日から12月2日までの間に順次発効される予定です。10月1日に発効する県もあれば、12月まで待つ県もあります。「10月分の給与から一律で新しい額」と思い込んで計算すると、発効日前の期間まで新額で計算してしまったり、逆に発効後も旧額のままにしてしまったりします。

  • 自社の事業所がある都道府県の発効日を、労働局の発表で確認する
  • 複数の都道府県に事業所がある場合は、事業所ごとに金額と発効日を確認する
  • 給与計算期間(締め日)と発効日の関係を確認する。発効日をまたぐ月は、発効日以降の労働時間分から新しい額で計算する

給与計算担当者が確認する5つのこと

ここからが実務の手順です。発効日までに、次の5つを順に確認します。

① 自社の事業所がある都道府県の新しい最低賃金額と発効日

まず基準になる数字を押さえます。本社と支店で都道府県が違えば、それぞれ別の額・別の発効日です。派遣スタッフを受け入れている場合、そのスタッフには派遣先(自社)の所在地の最低賃金が適用されます(派遣元の所在地ではありません)。

② 時給者(パート・アルバイト)の時給が新しい額以上か

もっとも分かりやすいチェックです。時給制の場合は「時給≧最低賃金額(時間額)」であれば問題ありません。新しい額を下回る人がいれば、発効日から時給を引き上げます。

③ 月給者も時間額に換算してチェックする

見落とされやすいのがここです。月給制の社員も最低賃金の対象で、次の式で確認します。

月給 ÷ 1か月平均所定労働時間 ≧ 最低賃金額(時間額)

1か月平均所定労働時間は「(年間所定労働日数 × 1日の所定労働時間)÷ 12」で求めます。たとえば1日8時間・年間所定労働日数240日なら、1か月平均所定労働時間は160時間です。この社員の月給が20万円なら時間額は1,250円、という具合に換算して、都道府県の最低賃金額と比べます。

日給制の場合は「日給 ÷ 1日の所定労働時間」、出来高払い・歩合給がある場合は対象期間の賃金総額を総労働時間で割って、時間額に直して比べます。複数の払い方が組み合わさっているときは、それぞれ時間額に換算して合計します。

④ 最低賃金の計算に入れられない賃金に注意する

月給者のチェックで特に重要な点です。最低賃金と比べるのは「毎月支払われる基本的な賃金」で、次のものは計算から除きます。

  • 結婚手当など臨時に支払われる賃金
  • 賞与など、1か月を超える期間ごとに支払われる賃金
  • 所定労働時間を超える時間の労働に対して支払われる賃金(時間外割増賃金など)
  • 所定労働日以外の日の労働に対して支払われる賃金(休日割増賃金など)
  • 午後10時〜午前5時の労働に対して支払われる賃金のうち、通常の労働時間の賃金の計算額を超える部分(深夜割増賃金など)
  • 精皆勤手当・通勤手当・家族手当

⚠️ 深夜だけ、除き方が違います。時間外と休日はその労働に対して支払われる賃金を全額除きますが、深夜は「通常の賃金を超える部分」=割増分だけを除きます。深夜勤務がある会社は、ここを混同すると判定を間違えます。

「基本給+各種手当」の合計で最低賃金をクリアしているつもりでも、通勤手当や家族手当を除くと下回っている、というケースがあります。除外する手当を引いた金額で判定してください。

⑤ 特定(産業別)最低賃金がある業種かどうか

鉄鋼業や自動車小売業など、一部の業種には地域別最低賃金とは別に「特定(産業別)最低賃金」が定められています。地域別と特定の両方が適用される場合は、高いほうの額以上を支払う必要があります。自社の業種に特定最低賃金があるかは、都道府県労働局の一覧で確認できます。

最低賃金を下回っていたらどうなる?

最低賃金額未満の賃金しか支払っていなかった場合は、その差額を支払う義務があり、地域別最低賃金を下回ると50万円以下の罰金の対象になります。

労働者と使用者が合意して最低賃金より低い賃金を定めても、その部分は法律上無効となり、最低賃金額で契約したものとして扱われます。「本人が納得しているから」は通用しません。

もし過去にさかのぼって下回っていた可能性に気づいたら、早めに都道府県労働局の賃金課(室)または労働基準監督署に相談してください。計算方法の相談も同じ窓口で受け付けています。

引き上げ後にやっておくと安心なこと

発効日の対応が終わったら、次のことも整えておくと翌年以降が楽になります。

  • 就業規則・賃金規程に最低額の記載がある場合、新しい額と矛盾していないか確認する
  • 求人票・募集要項の時給表示を新しい額に更新する
  • 今年どの都道府県がいつ発効したかをメモに残し、来年の作業リストにする
担当者

思っていたより見るところが多いですね。毎年ひとりでやっていると、これで合っているのか不安になります。

うさチュウ

不安になるのは、確認する範囲が広いからだよ。手順にして毎年同じ順番でやること、そして迷ったら労働局に聞くこと。ひとりで抱え込まなくて大丈夫。

まとめ

2026年10月の最低賃金改定で、給与計算担当者が確認することは次のとおりです。

  • 答申での全国加重平均は1,177円(前年度から56円の引き上げ)。引き上げ額は都道府県ごとに54円〜65円
  • 発効日は都道府県ごとに違う。事業所の所在地で確認する
  • 時給者だけでなく、月給者も時間額に換算してチェックする
  • 精皆勤手当・通勤手当・家族手当・賞与・時間外・休日の賃金は計算から除く(深夜だけは割増部分のみ
  • 下回っていたら差額の支払い義務があり、罰金の対象にもなる

範囲は広いですが、毎年同じ手順で回せば負担は減っていきます。判断に迷う場面は、推測せず労働局や監督署に確認するのがいちばん確実です。

よくある質問

最低賃金は2026年10月にいくら上がりますか?

2026年9月3日に全都道府県の答申が出そろい、答申での全国加重平均額は1,177円(前年度から56円の引き上げ)となりました。引き上げ額は都道府県ごとに54円〜65円と幅があります。発効は令和8年10月1日から12月2日までの間の予定で、都道府県ごとに順次です。自社に適用される金額と発効日は、事業所がある都道府県の労働局の発表で確認してください。

月給制の社員でも最低賃金のチェックは必要ですか?

必要です。月給を1か月平均所定労働時間で割って時間額に換算し、都道府県の最低賃金額(時間額)以上かを確認します。1か月平均所定労働時間は「(年間所定労働日数×1日の所定労働時間)÷12」で求めます。

通勤手当や家族手当は最低賃金の計算に入れていいですか?

入れられません。精皆勤手当・通勤手当・家族手当のほか、賞与など1か月を超える期間ごとに支払われる賃金、所定労働時間を超える労働(時間外)と所定労働日以外の労働(休日)に対して支払われる賃金は、最低賃金と比べる金額から除きます。深夜労働(午後10時〜午前5時)だけは扱いが違い、通常の労働時間の賃金の計算額を超える部分(割増分)のみを除きます。これらを除いた「毎月支払われる基本的な賃金」で判定します。

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※この記事は2026年9月9日時点の公的情報にもとづいてまとめたものです。最低賃金の確定額・発効日は各都道府県で順次公表されます。最新の情報は厚生労働省および各都道府県労働局の発表でご確認ください。

参考情報源

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