傷病手当金はいくらもらえる?条件・申請の手順と退職後に受け取るための注意点

ブランケットを羽織って申請書を見るうさチュウ

「入院することになった。休んでいる間、給料はどうなるんだろう」

体調を崩して長く休むことになったとき、いちばん最初に頭をよぎるのはお金のことです。治療に専念したいのに、生活費の心配で気持ちが休まらない。

そんなときのために、健康保険には「傷病手当金」という制度があります。給与計算の実務では、この申請書を会社側で何度も書いてきました。制度を知らないまま、受け取れるはずのお金を受け取っていない人を何人も見ています。

この記事では、受け取れる条件・いくらになるか・申請の手順を、順番にたどれる形でまとめます。とくに退職を考えている人が知らないと損をする落とし穴を、後半で詳しく書きました。

読むと、(1) 自分が対象かどうか (2) 1日あたりいくらになるか (3) 退職後も受け取れるのはどんなときか が分かります。

目次

この記事でわかること

  • 傷病手当金は、業務外の病気やけがで働けないときの制度であること
  • 受け取れるのは健康保険の被保険者。国民健康保険には原則ないこと
  • 金額は1日あたり「標準報酬月額の平均の30分の1 × 3分の2」で決まること
  • 期間は支給を始めた日から通算して1年6か月であること
  • 退職後も受け取れる場合があるが、一度でも働ける状態になると再開されないこと
  • 申請できる権利は2年で消えること

まず結論|受け取れるのは、この4つを満たしたとき

条件は健康保険法で決まっています。だから協会けんぽでも、健康保険組合(組合健保)でも、受け取れるかどうかの土台は同じです。⭐ 次の4つを、すべて満たす必要があります。

  1. 業務外の事由による病気やケガの療養のための休業であること
  2. 仕事に就くことができないこと
  3. 連続する3日間を含み4日以上仕事に就けなかったこと
  4. 休業した期間について給与の支払いがないこと

⭐ 1番の「業務外」がポイントです。仕事が原因の病気やけが、通勤中のけがは労災保険のほうで扱います。その場合は勤務先の所在地を管轄する労働基準監督署に相談してください。

⭐ 組合健保なら、上乗せがあることも

受け取れる条件は法律で共通ですが、健康保険組合は規約を定めて「付加給付」という上乗せを行えます。期間を延ばしたり、金額を上乗せしたりする独自の給付を持つ組合があります。

⚠️ あるかどうかも、中身も、組合によって違います。⭐ 勤め先の健保組合のページで「付加給付」を探してみてください。協会けんぽには、この上乗せはありません。

🔴 任意継続では受け取れません

会社を辞めたあとに健康保険を「任意継続」した人は、その期間中にかかった病気やケガについて傷病手当金を受け取れません。健康保険法でも、傷病手当金の対象から任意継続被保険者は除かれています。

⚠️ 任意継続に入ったからといって、新しく受けられるようになるわけではありません。ただし、退職日に傷病手当金を受けているか、受けられる状態で、ほかの条件も満たしていれば、資格喪失後の継続給付として受け取れます(後半の「退職後も受け取れるとき」を読んでください)。

国民健康保険の人は、原則として対象外です。国民健康保険法では傷病手当金が「行うことができる」給付とされていて、条例などで定めた市区町村・国保組合だけが実施する扱いだからです。自営業・フリーランスの方は、まずご自身の加入先を確認してください(マイナポータルの健康保険証情報、または資格確認書)。

てどりちゃん

パートでも大丈夫?

うさチュウ

勤め先の健康保険に「本人として」入っていれば大丈夫だよ。正社員かどうかは関係ない。⚠️ ただし家族の扶養に入っているだけの人は対象外。そこが分かれ目なんだ。自分の加入先は、マイナポータルの健康保険証情報か、資格確認書で確かめてね。

手順①|自分が対象か確かめる(待期の数え方に注意)

最初の3日間は支給されません。この3日間を「待期」と呼び、4日目以降の働けなかった日から対象になります。

⚠️ 待期の3日は、連続している必要があります。そして療養のため働けない状態が続いていれば、有給休暇や公休日(土日祝など)もこの3日に含めて数えます。

🔴 元気だった祝日を、あとからさかのぼって待期にすることはできません。その日も働けない状態だったことが必要です。

スクロールできます
日状況待期のカウント
月曜病気で働けない状態。祝日で会社も休み1日目
火曜病気で欠勤2日目
水曜有給休暇を使った3日目(待期が完成)
木曜以降引き続き働けないここから支給の対象

⭐ 働けない状態であれば、待期の3日を有給休暇で埋めてかまいません。支給されない3日間の生活費をカバーする人は多いので、残日数を先に確認しておくと落ち着いて動けます。

手順②|いくらになるか計算する

1日あたりの金額は、この形で決まります。

支給を始める日の属する月以前の、直近の続いた12か月の標準報酬月額を平均した額 ÷ 30 × 3分の2

ざっくり言えば「月給のおよそ3分の2」です。

標準報酬月額は、社会保険料を計算するために決められている、給与を区切りのよい金額に当てはめたものです。手取りでも額面そのものでもありません。自分の標準報酬月額は、会社からの通知や、給与の担当者への問い合わせで確認できます(4〜6月の給与で社会保険料が決まる!で決まり方を解説しています)。⚠️ 傷病手当金の計算には過去の月の金額も使います。いまの金額だけで計算しないでください。

計算のイメージ(標準報酬月額の平均が30万円の場合)

30万円 ÷ 301万円
1万円 × 3分の21日あたり約6,667円

⚠️ 実際には端数の処理が決まっています(÷30のときは10円未満、×3分の2のときは1円未満を四捨五入)。正確な額は健保が計算するので、ここでは「だいたいこのくらい」とつかめれば十分です。

⚠️ 対象の月が12か月に満たない人は、計算が変わります

使うのは「支給を始める日の属する月までの、直近の続いた12か月」の標準報酬月額です。⚠️ 入社からの年数ではありません。

その対象になる月が12か月に満たない場合は、①これまでの標準報酬月額の平均と、②健保が毎年度定める一定の額を比べて、低いほうで計算します。

⭐ 転職した人・年の途中で加入した人は、どの期間が含まれるかを健保に確認してください。

🔴 ②の金額は毎年度見直されます。この記事には金額を書きません。古い数字を覚えてしまうほうが危ないからです。

⭐ いまの金額は協会けんぽ「傷病手当金」で確認してください。組合健保の方は、ご自身の健保組合のページで確認します。

手順③|いつまで受け取れるか知る

支給を始めた日から通算して1年6か月です。同じ病気・けが、およびそれが原因で起きた病気について、この期間が上限になります。

⭐ 「通算」がとても大事です。途中で復職して支給が止まった期間は、カウントされません。実際に受け取った日数だけを足していきます。

てどりちゃん

復帰したり、また休んだりを繰り返しても大丈夫なの?

うさチュウ

在職中ならね。むかしは「支給開始日から1年6か月」という数え方で、休まず働いていた期間もカレンダー上で消化されていたんだ。それが令和4年1月1日から通算に変わった。⚠️ ただし退職後は話が別だから、次の章を読んでね。

⚠️ ネット上には改正前の説明が残っています。⭐ 見分けるポイントは「通算」と書いてあるか。「支給開始から必ず1年6か月で終わる」という書き方をしているページは、改正前の説明の可能性があります。

退職後も受け取れるとき(ここがいちばんの落とし穴)

条件を満たせば、退職したあとも受け取り続けられます。これを資格喪失後の継続給付といいます。

必要なのは次の2つです。

  1. 資格喪失日の前日(通常は退職日)までに、健康保険の被保険者期間が続けて1年以上あること(任意継続・共済組合・国民健康保険だった期間は数えません)
  2. 退職日に、傷病手当金を受けているか、受けられる状態であること

🔴 退職日に出勤すると、権利がなくなります

2番の条件は「退職日に働けない状態であること」を意味します。健康保険法は、継続給付の要件を「資格を喪失した際に傷病手当金の支給を受けているもの」と定めています。退職日に働いてしまうと、その日は「働けない」ではなくなります。

協会けんぽも「退職日に労務に服した場合、資格喪失後に傷病手当金は受けられません」と案内しています。⚠️ 退職後の給付を、まるごと失うことになります。

🔴 「少しだけなら」は通りません。保険者によっては「退職日にたとえ半日でも勤務した場合は対象になりません」と明記しています。

⭐ あいさつ・引き継ぎ・私物の引き取りは、退職日より前に済ませておくのが安全です。

⚠️ 退職日に会社へ行く用事がどうしても残るなら、行く前に健保へ確認してください。それが「労務に服した」と受け取られるかどうかは、用務の中身や実際に働いたか、療養の状況をふまえて保険者が判断します。

🔴 一度でも働ける状態になると、もう再開されません

健康保険法は、継続給付を「被保険者として受けることができるはずであった期間」と定めています。これを受けて協会けんぽは、「一旦仕事に就くことができる状態になった場合、その後さらに仕事に就くことができない状態になっても、傷病手当金は支給されません」と説明しています。

⭐ 法律の条件から来ているので、加入先が協会けんぽでも組合健保でも同じです。

⚠️ 在職中の「通算1年6か月」とは、ここが決定的に違います。在職中なら復職しても残りを後から受け取れますが、退職後は一度回復した時点で終わりです。

⭐ 退職の時期は、健保に相談してから決めてください。数日の違いで、受け取れる総額が大きく変わることがあります。

支給されない・減ることがある場合

次のようなときは、支給されないか、差額だけになります。

休業中に給与が支払われた支給されない。ただし給与が傷病手当金より少なければ差額が出る
同じ病気・けがで障害厚生年金を受けられる調整される。年金を日額に換算した額が傷病手当金の日額より少なければ差額が出ることがある(同じ理由の障害基礎年金があれば合算して比べます)
退職後の継続給付を受けている人が老齢退職年金を受けられる調整される。年金を日額に換算した額が傷病手当金の日額より少なければ差額が出る
出産手当金を受けられる期間と重なった出産手当金が優先。傷病手当金のほうが多ければ差額が出る
その病気・けがが仕事や通勤が原因健康保険ではなく労災保険。労働基準監督署へ(別の病気・けがで労災の給付を受けている場合も調整されることがあります)

⭐ 「もらえない」と決めつけないでください。給与やほかの給付があっても、条件によっては差額が支給されます。⚠️ どう調整されるかを決めるのは健保です。自己判断であきらめる前に、必ず聞いてください。

手順④|申請する

使うのは「健康保険傷病手当金支給申請書」です。協会けんぽのサイトからダウンロードできます。

書くのは、大きく分けて3者です。

  1. 本人 … 休んだ期間、振込先など
  2. 医師 … 療養の状況と、働けなかったことの証明(費用がかかることがあります)
  3. 勤め先 … 休んだ期間と、その間の給与の支払い状況

提出先は、加入している協会けんぽの支部(組合健保の方は、その組合)です。会社を通して出すのが一般的ですが、退職後は自分で出すことになります。

⚠️ 勤め先が証明するのは、在職していた期間についてです。退職後の期間だけを申請するときに勤め先の記入が要るかどうかは、加入していた健保に確認してください。

⭐ 協会けんぽは「審査の結果お支払い可能であれば、受付から10営業日以内にお支払いします」としています。⚠️ これは協会けんぽの目安です。組合健保は組合ごとに違うので、加入先の案内で確認してください。⚠️ 書き間違いや記入もれがあると書類が返され、その分だけ遅くなります。

⚠️ 申請できる権利は2年で消えます

健康保険法では、保険給付を受ける権利は「行使できるときから2年」で時効になると定められています。

⭐ 起算日は「働けなかった日ごとに、その翌日」です。協会けんぽもそう案内しています。まとめて申請するつもりで置いておくと、古い日の分から順に時効になります。1か月ごとなど、区切って出していくのが安全です。

まとめ|順番に確かめれば、迷いません

  1. 業務外の病気・けがで働けないかを確かめる(仕事が原因なら労災)
  2. 連続3日の待期を数える(働けない状態なら有給・公休も含む)。4日目から対象
  3. 標準報酬月額の平均 ÷ 30 × 3分の2でおおよその日額をつかむ
  4. 通算1年6か月が上限。復職した期間は数えない
  5. 退職するなら、退職日に出勤しない。退職後は一度回復すると再開されない
  6. 「健康保険傷病手当金支給申請書」を、本人・医師・勤め先の3者で仕上げて出す
  7. 2年で時効。ためこまずに区切って申請する

⭐ 金額や細かい取り扱いは、加入している健保が最終的に判断します。この記事は「何を確かめればいいか」の地図として使ってください。

退職を視野に入れているなら、お金の手続きは傷病手当金だけではありません。健康保険・失業保険・住民税の順番は、退職したあとのお金、どうなる?失業保険・健康保険・住民税|手続きの順番ガイドにまとめています。退職後の健康保険をどれにするかは、【任意継続と国保どっちが得?】退職後の健康保険3つの選択肢もあわせて確認してください。

よくある質問

傷病手当金は1日いくらもらえますか?

支給を始める日の属する月以前の、直近の続いた12か月の標準報酬月額を平均した額を30で割り、3分の2をかけた額です。標準報酬月額の平均が30万円なら、1日あたり約6,667円が目安になります。計算の対象になる月が12か月に満たない場合は計算方法が変わり、健保が毎年度定める一定の額と比べて低いほうを使います。その金額は毎年度見直されるため、協会けんぽのページで確認してください。

退職したあとも傷病手当金はもらえますか?

資格喪失日の前日(通常は退職日)までに健康保険の被保険者期間が続けて1年以上あり、退職日に傷病手当金を受けているか受けられる状態であれば、退職後も継続して受け取れます。ただし退職日に出勤すると対象外になります。また在職中と違い、一度でも働ける状態になると、その後また働けなくなっても再開されません。

有給休暇を使った日も傷病手当金はもらえますか?

療養のため働けない状態であれば、最初の3日間(待期)に有給休暇を使ってもかまいません。むしろ待期の3日は支給されないので、有給を使う人が多いです。ただし4日目以降について有給休暇で給与が支払われた場合、その日は原則として傷病手当金は支給されません。給与が傷病手当金の額より少ないときは、その差額が支給されます。

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参考情報源

※この記事は2026年9月15日時点の情報をもとに作成しています。⚠️ 金額や取り扱いは改正されることがあります。最新の情報と個別の判断は、加入している健康保険(協会けんぽ・健保組合)にご確認ください。

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