通勤手当は非課税でも社会保険料の対象|税金・保険料の違いと実務の注意点5つ

担当者

通勤手当って非課税ですよね。じゃあ、社会保険料の計算からも外していいんですか?

うさチュウ

そこがいちばん間違えやすいところなんだ。税金では非課税でも、社会保険料と雇用保険料では全額が対象。同じ通勤手当でも、計算ごとに扱いが違うんだよ。

通勤手当は、給与計算の中でも「計算によって扱いが変わる」代表的な手当です。所得税では一定額まで非課税なのに、健康保険・厚生年金・雇用保険の保険料では、非課税の分も含めて計算します。

この記事では、通勤手当の扱いを4つの計算に分けて整理したうえで、給与計算の担当者が実際につまずきやすい場面を5つ取り上げます。

目次

この記事でわかること

  • 通勤手当が、所得税・住民税・社会保険料・雇用保険料で、それぞれどう扱われるか
  • 6か月定期をまとめて払った月の、社会保険料の考え方
  • 通勤手当が変わったとき(引っ越し・在宅勤務など)に、月額変更届が必要になる場面
  • 出社日の交通費や、非課税の限度額を超える分の扱い

結論:通勤手当は「4つの計算」で扱いが違う

通勤手当は、税金では一定額まで非課税ですが、社会保険料と雇用保険料では全額が対象です。まずはこの表で、4つの計算を見比べてください。

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計算通勤手当の扱い根拠
所得税一定額まで非課税
超えた分は給与として課税
所得税法9条1項5号
住民税所得税と同じく、一定額まで非課税地方税法32条(所得税の計算の例による)
健康保険料
厚生年金保険料
非課税の分も含めて、全額が「報酬」健康保険法3条5項 など
雇用保険料
(労働保険料)
非課税の分も含めて、全額が「賃金」雇用保険法4条4項
労働保険徴収法2条2項

つまり、「非課税」は税金の話で、保険料の話ではありません。給与ソフトや給与明細で「非課税通勤費」と書かれていても、それは所得税の計算から外れているという意味です。

なぜ税金と保険料で違うのか

所得税では、通常の給与に加えて払う通勤手当について、法律で一定の範囲までを非課税にすると決めています(所得税法9条)。住民税も、所得税の計算の例によるので同じ扱いです。

一方、健康保険法では「報酬」を、名前に関係なく「労働の対償として受けるすべてのもの」と決めています。会社が決まりに沿って毎月払う通勤手当は、この「報酬」に入ります。雇用保険の「賃金」も同じ考え方です。

実務でつまずく5つの場面

ここからは、給与計算の担当者が実際に迷いやすい場面です。

① 6か月定期をまとめて払った月の保険料

6か月分の定期代を1回で払う会社では、その月だけ報酬が大きくなるわけではありません。健康保険・厚生年金では、6か月分の定期代を6で割り、原則として、実際に払った月から6か月間の報酬に割り振ります(日本年金機構の疑義照会回答)。定期券を使い始める月ではなく、払った月から数えます。

たとえば6か月で6万円の定期代なら、1か月あたり1万円として扱います。算定基礎届でも、4〜6月それぞれに割り振られた額を加えます。

つまずきポイント
まとめて払った月に全額を報酬として数えてしまうと、その月の報酬が大きくなり、標準報酬月額が高く出てしまいます。算定基礎届の4〜6月に定期代の支払い月が入るときは、月割りの額になっているかを必ず確かめましょう。

② 引っ越しや経路の変更で、通勤手当の額が変わったとき

通勤手当は、支給額や単価、支給方法が決まっている「固定的賃金」です。そのため、引っ越しや通勤経路の変更で支給額・単価・支給方法が変わると、「固定的賃金の変動」にあたることがあります。出社した日の分だけ払う会社で、出社の日数だけが変わった場合は、単価や支給方法の変更とは分けて考えます。

変更後の手当が給与に反映された月から3か月間の報酬を確かめ、原則として標準報酬月額が2等級以上変わることに加えて、支払基礎日数や、増えたか減ったかの向きなどの要件を満たすと、月額変更届(随時改定)が必要です。基本給が変わっていなくても、通勤手当の変更がきっかけになることがあります。要件のくわしい見方は、月額変更届とは?随時改定が必要なケースを解説で説明しています。

つまずきポイント
通勤手当の変更は、本人から総務などに届けが出て、給与担当まで伝わらないことがあります。住所や通勤経路の変更を知ったら、通勤手当の額と、月額変更届の対象になるかを一緒に確かめる流れを作っておきましょう。

③ 在宅勤務で通勤手当をやめた・日額に変えたとき

在宅勤務の導入などで、通勤手当を払わなくなった、月額から日額(出社した日の分だけ)に変えたという場合も、固定的賃金の変動にあたり、随時改定の要件にあてはまるかを確かめる必要があります(日本年金機構の事例集)。

一方、産休などで通勤しなかったために、その月の通勤手当が出なかっただけの場合は、手当そのものがなくなったわけではないので、随時改定の対象になりません。

つまずきポイント
「払わなくなった理由」で扱いが分かれます。制度として変えたのか、その月に通勤がなかっただけなのかを分けて考えましょう。

④ 在宅勤務の人が出社した日の交通費

在宅勤務の人に、出社した日の交通費を払う場合は、その日の働く場所が、雇用契約でどこになっているかで扱いが変わります(日本年金機構の事例集・厚生労働省のテレワークQ&A)。

  • 働く場所が「自宅」の日に、会社の指示で一時的に出社し、その交通費を実費で精算した:原則として実費の弁償なので、報酬(賃金)に入れない
  • 働く場所が「会社」の日に、自宅から出社した:原則として通勤手当なので、報酬(賃金)に入れる

同じ「出社の交通費」でも、その日の働き方によって保険料の扱いが変わります。就業規則やテレワークの規程で、働く場所の決め方を確かめておきましょう。書類の上の勤務場所を変えるだけで、一律に対象外になるわけではありません。

⑤ 非課税の限度額を超える分

所得税の非課税には限度額があります。電車・バスなどは、最も経済的で合理的な経路・方法による運賃などが、1か月15万円を上限に非課税になります。新幹線や特急もこの条件にあてはまれば含まれますが、グリーン料金は含まれません。マイカーや自転車などは、片道の通勤距離や、有料道路・駐車場などの利用条件によって限度額が違います(国税庁「マイカー・自転車通勤者の通勤手当」)。

限度額を超えた分は、給与として所得税の対象になります。ただし、社会保険料と雇用保険料は、もともと通勤手当の全額が対象なので、限度額を超えても超えなくても扱いは変わりません。

つまずきポイント
マイカー通勤の限度額は改正されることがあります。2026年の改正では、遠距離の区分が見直され、条件を満たす駐車場などの料金を加える仕組みもできました(2026年4月1日以後に支払われるべき通勤手当から。国税庁「通勤手当の非課税限度額の改正について」)。金額は覚えず、支払う時期に使われる額と条件を、国税庁の案内で確かめましょう。

給与ソフトで確かめておきたい3つの設定

通勤手当の扱いは、給与ソフトの支給項目ごとの設定で決まることが多いです。前任者から引き継いだときや、新しく手当を作ったときは、次の3つを確かめておきましょう(項目名はソフトによって違います)。

  • 所得税:通勤手当が「非課税」になっているか。限度額を超える分を課税にできているか
  • 社会保険:通勤手当が「報酬に含める」になっているか
  • 雇用保険:通勤手当が「賃金に含める」になっているか

「含めない」設定になっていると、雇用保険料の計算や、社会保険の届出に使う報酬額を間違える原因になります。健康保険・厚生年金では、標準報酬月額や控除額に影響していないかも確かめ、誤りがあれば訂正と精算をします。ソフトの動きは製品によって違うので、使っているソフトで確かめてください。

通勤手当以外の手当(家族手当・住宅手当・在宅勤務手当・食事・社宅など)の設定は、給与計算の手当は税・社保・雇用保険に含める?支給項目の設定一覧表にまとめています。

経理と話すときの言葉

通勤手当を帳簿にどう記録するかは、会社によって違います。給与と同じ「給料手当」に含める会社もあれば、「旅費交通費」や「通勤費」として分ける会社もあります。経理担当と話すときは、自分の会社でどの名前を使っているかを確かめておくと、話が早くなります。

年収の壁と通勤手当

扶養や社会保険の加入を判断する「年収の壁」でも、通勤手当の扱いは制度によって違います。くわしくは、106万円と130万円の壁の違いと、「106万円の壁」は2026年10月に撤廃で説明しています。

うさチュウとQ&A

担当者

通勤手当が保険料の対象になるって、社員に聞かれたらどう説明すればいいですか?

うさチュウ

「税金では非課税だけど、保険料では給料の一部として数える決まりになっている」と伝えれば大丈夫。「通勤手当を保険料の計算に含めること自体は、制度どおりの扱いですよ」と最初に言ってあげると安心してもらえるよ。

担当者

定期代を6か月分まとめて払っている会社なんですが、算定基礎届はどうすれば……

うさチュウ

6で割って、払った月から6か月間に割り振るんだ。算定基礎届では、4月・5月・6月それぞれに割り振られた額を入れてね。途中で経路や金額が変わったときは、同じ額を3か月にそのまま書き写さないように気をつけて。

うさチュウ

通勤手当は「4つの計算で扱いが違う」と覚えておくだけで、迷う場面がぐっと減るよ。

よくある質問

通勤手当は社会保険料の計算に含まれますか?

含まれます。健康保険料・厚生年金保険料の計算では、通勤手当は所得税で非課税になる分も含めて、全額が「報酬」になります。雇用保険料の計算でも、全額が「賃金」に含まれます。

6か月分の定期代をまとめて支給した場合、標準報酬月額はどうなりますか?

6か月分の額を6で割り、原則として実際に支給した月から6か月間の報酬に割り振ります。算定基礎届でも、4〜6月それぞれに割り振られた額を加えます。

通勤手当の額が変わったら、月額変更届は必要ですか?

支給額・単価・支給方法が変わると、固定的賃金の変動にあたることがあります。変更が反映された月から3か月間の報酬で、原則として標準報酬月額が2等級以上変わり、支払基礎日数などの要件も満たす場合は、月額変更届が必要です。

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参考にした公的機関の情報

※この記事は2026年10月時点の公的情報をもとに、一般的な内容をまとめたものです。制度は改正される場合があります。実際の扱いは、国税庁・日本年金機構・労働局などの公式情報や、自社の規程でご確認ください。

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